この記事は「子供/保護者」×「オンラインコミュニケーション」Advent Calendar 2016 - Adventarの21日目を担当したものです。
私が大学で受け持っている科目の一つに「情報と通信の理論」があります。クロード・シャノンの情報理論にトラフィック理論を少々加えた内容が中心なのですが、それだけで情報と通信を語ることはできないので雑談を多く混ぜ込んでいます。その一部をもとに今回の記事を書いてみます。子供とか保護者とかに特化した話じゃないのはご勘弁ください。
世界一短い手紙と呼ばれる逸話があります。『レ・ミゼラブル』の出版時に亡命していたヴィクトル・ユーゴーが出版社に "?" と手紙を送り、出版社は "!" と返信したというものです。これによって大変な売れ行きだということがユーゴーに伝わったわけです。しかしこれをシャノン流の情報の定義で測ると片道 5 ビット程度の情報量にすぎません。(符号をアルファベットと基本的な記号から選ぶとする)
現代の情報化社会の基盤になっている情報理論は 1948 年当時電話会社の研究所に在籍していたシャノンが考案したものです。そして通信回線の中にどれだけの情報を流せるかを定量化したものなわけであり、人間のコミュニケーションで交わされる情報量をそれだけで測るのは無理があるでしょう。
情報は英語で INFORMATION と書きますね。IN-FORMATION つまり形 (文字とか音声とか) にしたものです。シャノンの情報理論とそれに基づく情報通信が扱っているのはこれなわけです。それに対して人間は形にならない情報、つまり EX-FORMATION (外情報) の交換を行っていると考えられます。
人間のコミュニケーションにおいて、脳内の EXFORMATION を削ぎ落とし不可逆圧縮を行ったものが INFORMATION であるとも言えるでしょう。それが対面ではない帯域幅の限られた通信路を介すほどに削ぎ落とされるものは大きくならざるを得ません。そして受け取った相手はその圧縮された INFORMATION を脳内に再展開するのです。その際に想像力によって EXFORMATION が加わります。この EXFORMATION がうまく以心伝心されれば良いのですが、うまくいかないと「誤解」が発生するわけです。哲学者のフッサールの「会話の木」という概念がこのことを示しています。(表象と認識のギャップについてはフッサールや青田青嗣あたりお薦めです)
別な言い方をすれば人間同士のコミュニケーションでは、TEXT だけ見ていてもダメで CONTEXT が重要なのです。CON は CONVIVIALITY にも使われている「共に」という接頭語です。人と人が共にあって文脈を共有し合うことが大切なわけです。オンライン・コミュニケーションではこのあたりが希薄になりがちなので気をつけたいですね。
p.s.ミームのこととか講義の雑談ネタをもっとたくさん書きたかったのですが、長く書いても読まれないのでこれくらいにしておきます。興味ある人は私の講義に潜り込んでください。
参考: 『ユーザ・イリュージョン』Copyright by T.Suzuki