トップ «前の日記(2012-10-02) 最新 次の日記(2012-12-21)» 編集

インターノット崩壊論者の独り言


EPIC2014
Google Public DNS (8.8.8.8, 8.8.4.4) 経由では本サイトにアクセスできないよう措置させて頂いております。

2012-11-26 インターノットの民主化のために

JPNICを訴えました

このたび社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター (JPNIC) を相手取って裁判をはじめることとなりました。皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

JPNIC は平成23年8月31日に規約を一方的に変更し、私(や多くの歴史的PIアドレスやAS番号の利用者たち)がそれに同意していないにも関わらず平成24年度から(JPNICができる前から使われていたものも含む)歴史的PIアドレスやAS番号に対して維持料を課すことを決め、平成9年に東海地域のネットワークの相互接続のために割り当てを受けた AS7520 にもこの4月から維持料を請求してきました。これを無視していたところ年14.5%の延滞利息まで請求をはじめ、督促の電話も入るようになり、ついに内容証明の請求を送付するという電話が入りました。これは裁判を辞さないということですので、それではと先手を打って 10月22日(月) に名古屋地裁に債務不存在確認請求の訴状を提出させて頂きました。

本当は歴史的PIアドレスへの課金について争いたかったのですが、大学を原告にするのは困難でしたので、私の管理するAS番号で争うことにしたものです。全国の歴史的PIアドレス管理者の皆さんの多くも、その立場の弱さから忸怩たる思いで高額な課金を受け入れたと思います。あるいは歴史的なPIアドレスを返却あるは売却してしまった組織もあるようです。JPNIC に対しては「学生たちからグローバルIPアドレスを取り上げないでくれ」と訴えたのですがそうした声は無視されましたね。そうした思いを背に私一人ででもなんとか戦い抜きたいと思います。

訴えの要点は以下の通りです。

  1. 本規約第10条の規約変更権条項は信義則に反し無効であること
    「当センターは、事前の通知なく、本規約を変更または新たに定めることができる」などという規約変更権条項を有料化(維持料請求)が一方的に可能であることの根拠としていますが、このような条項は信義則に反し法的に無効でしょう。これが認められるならば、無料のオンラインゲームをある日突然有料にすることも可能ということになってしまうのではないでしょうか。(どうもそのような事例を争った判例はないらしく、今回の裁判は判例を作る重要なものとなりそうです。)

    以下、訴状より

    契約当事者は、契約内容を変更する旨の新たな合意をしない限り、契約締結時の契約内容に拘束される。これは、私的自治の原則から現行法上当然に認められる権利義務状態である。この大原則に反し、規約作成者たる被告のみに、規約内容、すなわち契約内容を変更する権利を認める条項は、一方的に契約内容の変更を受ける原告の契約上の地位を著しく不安定にし、また、原告に一方的不利益を課すものであるから、規約変更権条項自体、信義則に反し無効である。 したがって、被告は本規約第10条を根拠に規約を変更し維持料を請求することは許されない。
  2. 維持料の支払は契約の根幹に関わる事項であること

    以下訴状より

    被告の請求する維持料は、原告に対し、原被告間の契約締結当時には存在しなかった新たな負担を課すものである。また、維持料の負担の有無は、契約の根幹である「対価」に関する事項であり、まさに契約の核心部分である。 このような契約の根幹部分についてまで他方当事者である被告により一方的に変更され、契約締結当時には存在しなかった対価の負担を甘受しなければならないとするならば、原告の地位は著しく不安定なものとなることは明らかである。 したがって、被告が本規約第10条を根拠に規約を変更し、原告に契約の根幹である対価たる維持料の請求をすることは許されない。
  3. 被告が規約を変更し維持料を請求する合理的理由はないこと
    ほとんど変動のない AS 番号の台帳管理への対価として JPNIC が高額の維持料を請求する合理的理由がありません。

訴状では論点を絞った方がよいと考え、規約変更の不当性を論点としています。しかし、本当に訴えたいのはその背景にある JPNIC の非民主的な運営です。今回の不当な課金についても、当初は当事者への説明会すら開催を否定されたりしました。その他ここでくどくどとは述べませんが、多くの方々(特に学術や地域ネットワークの方々)にはご理解頂けるものと思っています。

一方で「インターネット」の問題はインターネットのコミュニティで解決するのが筋だとおっしゃる方も多そうですが、そんな自律分散協調のインターネット幻想はすでに崩壊しているのです。「インターネットはインフラだ」などと言いつつ、幻想を語るのはおかしいでしょう。インフラだというのならなおさら法の下で民主的に活動を行って欲しいですね。市民から見えないところでISPの技術者たちだけで勝手なことしていないで、すべてのネットワーク利用者がステークホルダーとして参加し議論できる場を設けて欲しいものです。

12月3日(月)13:10から名古屋地裁で第1回口頭弁論が開かれる予定となっていますが、被告側から東京への移送の申立てが出ているとのことですのでどうなるかわかりません。とりあえず延期の可能性もあります。ここでも東京一極集中なんでしょうかね。


参考リンク

追補:参考までにこういうやりとりもありました。

From: "T.Suzuki"
To: ip-users
Reply-To: ip-users
Subject: (JPNIC-IP-USERS 1857) IPアドレス事業料金体系見直しについて
Date: Tue, 27 Apr 2010 09:08:41 +0900
 
「IPアドレス事業料金体系見直しに関するご意見募集について」
 
というメールをJPNICさんから何通か受け取り、たった1週間の期限で意見を
求められているところです。(明日締切り)
 
これに答えるにあたって、いろいろ疑問があります。
とりあえず以下の2点、わかる方がいらっしゃいましたら教えてください。
できましたら、意見提出までの期間が短いこともあり、今日中に知りたいと
思います。
 
1. 参考資料のなかに、レジストリシステム追加開発計画概略として、
 「逆引きネーム サーバへの DNSSEC対応」約18,000千円
 というものがありますが、逆引きをDNSSEC対応とすることについて、その
 必要性がまったくわかりません。DNSSECに逆引きの信頼性を担保する機能
 はないと理解しています。
 どなたか約18,000千円かけて開発(運用費用はまた別ですよね)する必要
 性を教えてください。
 
  参考資料「IPアドレス事業料金体系見直しについて」
    (第25回 IPアドレス管理指定事業者連絡会資料)
    http://www.nic.ad.jp/ja/materials/ip/20100325/fee.pdf
 
2. IPアドレス管理指定事業者には説明会が開かれているようですが、事業者
 以外で、今回の見直しに関係する方面(歴史的PIホルダーやASやPIの割り当
 てを受けている任意団体や個人など)への説明会は開かれないのでしょうか。
 
-- 
-----------------------------------------------------------------------
T.Suzuki / E.F.シューマッハーとI.イリイチを読もう

1. については回答なし。(いまだに)
2.については、当時、JPNICさんから以下の不誠実な回答を頂きました。

> 2. IPアドレス管理指定事業者には説明会が開かれているようですが、事業者
>  以外で、今回の見直しに関係する方面(歴史的PIホルダーやASやPIの割り当
>  てを受けている任意団体や個人など)への説明会は開かれないのでしょうか。
>  (とりあえず先ほど事業者向け説明会に申し込んでみました)
 
現在のところ、説明会等の開催は予定しておりませんが、料金案が決定
しましたら、電子メールなどでのご連絡を予定しております。
本日のツッコミ(全14件) [ツッコミを入れる]
なおき (2012-11-26 20:23)

がんばってください。これは、負けられない。

匿名希望 (2012-11-26 22:01)

JPNICは一度解体すべきだと思っています。カンパ程度しかできませんが、もし呼び掛けがあったら応じます。

ktamura (2012-11-27 11:24)

頑張って下さい。

TrackBack (2012-11-27 11:31)

http://hamamuratakuo.blog61.fc2.com/blog-entry-856.html<br>浜村拓夫の世界<br>JPNICによる搾取<br>JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)に対する裁判がありました。 日本において、インターネットを独占的に管理・支配しているJPNICに対して、抗議している方がおり、興味深い主張を展開されております。 今後の続報に注目したいと思います。 インターノット崩壊論者の独り言(2012-11-26) インターノットの民主化のために

外野 (2012-11-27 11:44)

IPアドレス管理指定事業者連絡会とかその他会合で長い時間かけて民主的に話し合われて決まったことに不満だからって裁判起こすとは、身勝手に見える。そもそもAPNICによる料金改正をきっかけとして、指定事業者と歴史的PIホルダとの間の負担の公平化が発端でしょう? 既得権益を盾に他者に自分の分まで負担させようとしているなら、論外だろう。JPNICが経費を水増しして誰かが私腹を肥やしているというなら、頑張って白日の下にさらしてください。

tss (2012-11-27 12:15)

争点が理解されていないようですね。

tss (2012-11-27 12:24)

民主的に話し合われてきたのかが大きな争点だったりします。

(2012-11-27 13:17)

頑張ってっください。<br>当社も検討の結果、不当であるとの認識に至りましたが、法務と相談の上、コスト対効果の観点で長い物に巻かれてしまいました。<br><br>担当者としては忸怩たる思いがありましたので、陰ながら応援させていただきます。<br><br>上の方で「外野」さんが指摘されている意見は一理ありますが、JPNICの会計の不透明性は古くから指摘されているところでもあります。(最近は興味がないのでよく見ていませんが、以前問題だと思ったときには2つの会計があり、その間で資金の受け渡しまでありました。)<br>今回の問題提起を通してJPNIC, APNICともに「これだけ掛かるんだから利用者に転嫁する」なんてこのご時世にはあり得ない運用は止めてもらって競争によりサービス、価格を争うような構造になってもらいたいと思います。

原価厨 (2012-11-27 15:18)

当初のIPアドレスの割り当て(JNICによるもの?それ以前?)について独占的利用権の貸与であったか譲渡であったか。また割り当てを受けた組織とJPNIC前身組織の関係について正当に継承されていたかとかなどなど色々な争点がありそう。<br>APNICからJPNICへの課金ってどれくらいなんでしょ?アドレス2倍使っても維持量2倍じゃないですよね?

tika (2012-11-27 23:53)

歴史的PIアドレスを保持していた一管理者ですが、JPNICの説明会等に参加していましたが一方的な課金については今だ納得していません、本来は中立的立場でなければいけないのがJPNICと言う組織だと思うのですがインターネット上で企業活動を行っている組織(大手会員?)の意見に沿った組織運営となっているのは釈然としない思いがあります、JPNICと言う組織の今後のあり方まで含めた議論があれば良いのではないかと思います。

tss (2012-11-30 21:46)

速報: 名古屋地裁が東京移送を認める決定をしたため、12/3 の名古屋地方裁判所の公判はなくなりました。今後のことについてはまた追ってブログを書きます。

tss (2012-12-02 11:56)

応援してくださる方々がたくさんいらっしゃいます。どうもありがとうございます。

公益ぼったくり法人 (2012-12-28 17:11)

利益を出さない建前の社団のJPNICの業務を利益を追求する株式会社のJPRSが行ってるから、本来なら社団取り消しでしょ。

tss (2013-02-10 19:45)

誤解されている方もいるようなので簡単に書いておきますが、維持料を負担すること自体は拒否していません。問題は維持料を払うことがその負担者を交えて民主的に決定されていないことなのです。過去民主的に議論されてきたというのは事実誤認です。歴史的PIアドレスやAS番号の利用者も日本のインターノットガバナンスに参加できる民主的な枠組みを望んでいるのです。


最近の日記

2008|04|05|06|07|08|10|11|
2009|02|03|04|06|07|09|10|11|
2010|01|03|06|09|10|11|12|
2011|01|02|03|05|06|07|10|11|
2012|03|06|07|10|11|12|
2013|02|03|04|05|06|08|09|10|11|
2014|01|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2015|01|02|03|04|07|08|09|10|11|12|
2016|01|06|08|12|
2017|03|07|08|09|12|
2018|04|08|10|11|
2019|01|02|07|11|12|
2020|01|02|03|05|06|07|08|
2021|02|03|09|12|
2022|02|03|05|06|
2024|02|12|

リンク

Copyright by T.Suzuki