以前の日記に、「某所で 512 byte の壁に激突した」と書いたが、これは、qmail.jp の前野先生とのメールのやりとりのなかで露見した壁だった。 これについて qmail.jp の前野先生が qmail のページで以下のような警告を出された。
dns.c 中の PACKETSZ が 512 になるような OS を使っているならば、 4096 以上になるように修正することを勧めます。
FreeBSDでは以下のように PACKETSZ=512 となっている。
/usr/include/arpa/nameser.h:#define NS_PACKETSZ 512 /* default UDP packet size */ /usr/include/arpa/nameser_compat.h:#define PACKETSZ NS_PACKETSZ
ここを直接変更することは影響が大きいと思われるので、qmailのdns.cの該当箇所を変更するべきだろう。なお、公式アップデートやパッチはもう出ないと思った方がいいんじゃないかな。
512byteの壁はEDNS0やTCPに対応すればいいというものじゃないってことで、、、
そもそもインターネットとはそんなものなのだから、(強調は私による)
(中略)
すべてのWebサイトはSSLを用い、すべてのページを https:// で提供しなければならないことになる。それは現実的でないだろう。
もう一歩、踏み込んで考えて見ればよい。インターネットに対する人々の期待がとうの昔に現実的ではないものになっているということだ。人々はインターネットに幻想を抱いていることに気づかなくてはいけないんじゃないかな。(だいたい、Webサイトがhttpsに対応したところで必ずしも安全になるわけじゃない)
「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(略称 青少年インターネット環境整備法 / 通称 青少年ネット規制法)が、11日の首相問責決議のどさくさに紛れて成立した。内容の評価をしようと思ったのだが、それ以前の問題に嵌まってしまった。
こちらの法文を読んでみると、用語の定義を行っている第二条に、
3 この法律において「青少年有害情報」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧(視聴を含む。以下同じ。)に供されている情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するものをいう。
とか、
5 この法律において「インターネット接続役務」とは、インターネットへの接続を可能とする電気通信役務(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。以下同じ。)をいう。
6 この法律において「インターネット接続役務提供事業者」とは、インターネット接続役務を提供する電気通信事業者(電気通信事業法第二条第五号に規定する電気通信事業者をいう。以下同じ。)をいう。
7 この法律において「携帯電話インターネット接続役務」とは、携帯電話端末又はPHS端末からのインターネットへの接続を可能とする電気通信役務であって青少年がこれを利用して青少年有害情報の閲覧をする可能性が高いものとして政令で定めるものをいう。
8 この法律において「携帯電話インターネット接続役務提供事業者」とは、携帯電話インターネット接続役務を提供する電気通信事業者をいう。
9 この法律において「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報を一定の基準に基づき選別した上インターネットを利用する者の青少年有害情報の閲覧を制限するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)をいう。
10 この法律において「青少年有害情報フィルタリングサービス」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報を一定の基準に基づき選別した上インターネットを利用する者の青少年有害情報の閲覧を制限するための役務又は青少年有害情報フィルタリングソフトウェアによって青少年有害情報の閲覧を制限するために必要な情報を当該青少年有害情報フィルタリングソフトウェアを作動させる者に対してインターネットにより継続的に提供する役務をいう。
11 この法律において「特定サーバー管理者」とは、インターネットを利用した公衆による情報の閲覧の用に供されるサーバー(以下「特定サーバー」という。)を用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置き、これに閲覧をさせる役務を提供する者をいう。
12 この法律において「発信」とは、特定サーバーに、インターネットを利用して公衆による閲覧ができるように情報を入力することをいう。
等々とあるのだが、肝心のインターネットが定義されていない。
なんとなく、ウェブ(WWW)のことを指しているようにも感ずるのだが、勝手に解釈してはいけないだろう。ということで、衆議院調査局第一特別調査室(青少年問題に関する特別委員会担当)に電話して聞いてみた。この法文にインターネットの定義はいらないのか、あるいは他の法律ですでに定義がなされているのか、、、
幸いに質問の趣旨をすぐに察していただくことができ、折り返しお返事をもらうことになった。しばらくしてメールで以下のような回答が返ってきた。
1.「インターネット」を定義した規定を持つ法律はない。
2.「インターネット」を定義しなかった理由は、
すでに法律上、一般的に使用されていること
日常的に使われている語と法律上使用される語について、意味と範囲に差異がないこと
とのことで、衆議院法制局に確認をとって頂いた回答とのことだった。なお、対応頂いた方は鋭い人で、
本法律の「インターネット」の語が、インターネットの技術的特性などを的確に捉えていない、あるいは範囲が明確でないとの趣旨でのご質問と推察いたしますが、
と理解を示してくれたが、
委員会においては、参考人として、インターネット協会や携帯電話事業者の方をお呼びして、ご意見を伺っております。参院においては、マイクロソフト社から参考人をお呼びしたようです。
とのことだった。
さて、上記法文において、日常的に使われている語としての「インターネット」がウェブのことを指しているのであれば、問題はウェブに限定される。委員会審議において、衆議院では携帯電話事業者に、参議院ではマイクロソフトに参考人として意見を聞いたということなので、やはり「インターネット」=「ウェブ」のような気がしないでもない。
しかし、衆議院の委員会審議においては、(財)インターネット協会も参考人で意見を述べているとのことだし、念のため衆議院法制局に電話してみると、こちらも丁寧に対応いただき、「定義しようとすると難しくなってしまいますね。この法律では社会通念上インターネットとよばれるものすべてを含むという解釈になるでしょう」とのことだった。(なおインターネット協会にもインターネットの定義を問い合わせ中)
さて、「社会通念上インターネットとよばれるもの」とは、、、それによって、法律への対応が違ってくるはずだが、、、インターネットって何。
6/15追記
私の解釈におけるインターネットは崩壊しているのでどうでもいいのだが、この法律でいうところのインターネットがウェブじゃないとすると、それ以外も含む「青少年有害情報フィルタリングサービス」ってあるのだろうか、、、実は衆議院法制局にウェブ以外も含むのかと聞いた結果が「社会通念上インターネットとよばれるものすべて」との見解なのでその実効性が気になるところ。(奥村先生のblogに紹介されたので念のため)
Free-For-All? これが本当ならインターネットとやらもこれで終わり。調子に乗りたいだけ乗ってください。
The race is on: Get your own Internet domain
http://www.iht.com/articles/2008/06/22/business/net23.php
インターネット崩壊を悟った勢力、売り抜けたい勢力、いまだに夢を見ている勢力が手を結んだってことでしょうかね。今やICANNはドメインブローカたちの思いのまま。
6/28 追記: ICANN声明 Biggest Expansion to Internet in Forty Years Approved for Implementation
7/6 追記: 上記翻訳(by JPNIC)
2つのインターネット幻想がある。
1つめは、インターネットと呼ばれたものの理念。これはいまだ実現していないという意味において、つまり過去の古き良きインターネットというときのノスタルジアのなかにも実はなかっただろうという意味において、いまだ幻想のままだといえる。
そして、2つめは、「今のインターネットのようなもの」の実態への無知による誤解、あるいはab-useともいえる幻想、インターネットをインフラと見ているような幻想がある。理念としてのインターネットには存在しないはずの「インターネットユーザ」たちの大多数がこの幻想を抱いている。
問題は、2つめの幻想につけこんで、でたらめなビジネスを展開している人々(たとえばドメインブローカたち)の存在であり、また、悪意はなくとも一部の専門家が今の「インターネットのようなもの」において現実を見ず、いまだ1つめの幻想を今の「インターネットのようなもの」のうえに追い求め、人々を惑わしていることにある。1つめの幻想を追うのであれば、今の「インターネットのようなもの」の上に砂上の楼閣を立てるのではなく、別世界でそれを追い求めるべきである。
今の「インターネットのようなもの」は Internet とかつて呼ばれたものではない。これからは、今の「インターネットのようなもの」は (The?) Internot 、その「ユーザ」たちの集合は Internots と呼ぶことにしう。
インターネットは幻想であった。そして近いうちに崩壊を迎えるであろうインターノットもまた幻想である。誤解のないよう、自称を変えておこう。
知らなかったのですが、こんなやつがICANNのCEOなわけですね。
マッキンゼーのコンサルタントで、投資会社経営な人物なわけですね。
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITba000030042008
インターネットの自由を守れですか。そらぞらしいなぁ、、、
「NGNの定義は様々」ですかぁ、、、
「(NGNは)進化の止まったウォールドガーデン」ねぇ、、、
それってインターノットのことじゃないのかなぁ、、、
『NGNの事業者に「誰もがアクセスできるか」「(その上に乗るサービは)どこからアクセスしても差別なく同じ価格で提供されているか」といったことを問えば、違いがわかるだろう。』なんて言っていていいのかなぁ、、、
「ユーザーがまずIPv6の意義を理解して、通信会社や機器メーカーにプレッシャーをかける必要があるだろう。IPv6の準備が進まないままにアドレス枯渇の時期が近づき2000年問題のように直前にあわてるような事態は避けるべ きだ。」ですかぁ、、、他人事のようですね。
IGFの最大のテーマも理解していないようだし、、、
Copyright by T.Suzuki
■ qmail [512byteの壁はEDNS0やTCPに対応すればいい、だけではない]
■ tss [いまさらな話 https://lists.dns-oarc.net/pipermail/dns-operations..]