DNS から考えるコンヴィヴィアリティのための技術



Feb 6, 2026 情報処理学会 ITフォーラム2026 - CITPフォーラム-
 
中京大学 工学部 情報工学科 教授
鈴木常彦

インターネット技術はおんぼろ仕様

インターネットは進化している?

インターネット技術は実装もおんぼろ

おんぼろでもやってこれた

時代は変わり

そして運用もおんぼろに

間違った理解、間違った設定、出鱈目な運用、間違った解説が氾濫

自律から遠ざかるDNS

DNS の脆弱性の一角を紹介

1. Dangling Records (宙ぶらりんのレコード)

レンタルサーバを解約した後 A, CNAME, NS, MX などのレコードが残っていると危ない

A レコードを消さずにレンタルサーバを返した事例

m.chukyo-u.ac.jp

総務省の Dangling CNAME を発見
(2024/12/21 土曜)

特別定額給付金サイトだった kyufukin.soumu.go.jp の CNAME (別名に対する本名) が宙ぶらりんだった。

% dig kyufukin.soumu.go.jp

;; ->>HEADER<<- opcode: QUERY, status: NXDOMAIN, id: 15370

;; ANSWER SECTION:
kyufukin.soumu.go.jp.  600 IN CNAME kyufukin.sakura.ne.jp.

;; AUTHORITY SECTION:
sakura.ne.jp.  3600 IN SOA dns.sakura.ad.jp. noc.sakura.ad.jp. (
        2024121200 ; serial
        3600       ; refresh (1 hour)
        600        ; retry (10 minutes)
        3600000    ; expire (5 weeks 6 days 16 hours)
        3600       ; minimum (1 hour)
        )

;; WHEN: Sat Dec 21 01:03:31 JST 2024

kyufukin.soumu.go.jp を保護
(2024/12/21 土曜)

夜道で迷子を見つけたら保護しますよね! (誘拐ではない)


soumu cname

その他多くの GO.JP, LG.JP 等を保護
(2024 年末 - 2025 年始)

村上総務大臣が記者会見 (令和7年1月14日)

質疑応答
総務省の使用済みドメインの対策

問:
 総務省の使用済みドメインが、第三者に不正利用され得る状態にあったという報道がありました。総務省として、いつ覚知し、対策はいつ完了したのか。また、こういう状況に陥ったことについての大臣の受け止めをお願いいたします。

答:
  令和2年に総務省が運用していた、特別定額給付金に関する特設サイトについて、サイトの閉鎖後、そのドメイン、ご承知のように、ドメインとはインターネット上の住所ですが、不正利用され得る状態となっておりました。
  このことについて、昨年12月23日に外部からの情報提供により覚知しまして、翌日24日にはシステム上の対応を行い、対策を完了しました。
  なお、当該サイトが実際に不正利用されていたとの事実は把握しておりません。
  総務省では、自治体等に対し、ドメイン管理の注意喚起を行ってきた中で、このような事案が生じたことは誠に遺憾であります。
  今回の事案も踏まえ、サイトのドメイン管理を徹底して、再発防止に努めてまいりたいと考えております。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02001408.html より

その後も多くの GO.JP, LG.JP 等を保護・通報


Dangling CNAME record 4 件、Dangling NS records (lame delegation) 26 件

2. 隠れオープンリゾルバ

あなたのネットワークありませんか?

検査してみましょう

隠れオープンリゾルバ対策

技術のあり方を問う

「自由のユートピア」から「自由からの逃走」へ

理想(かつて)
  • 自由・自律・分散
  • P2P・PGP (暗号技術の開放/政府による盗聴への抵抗)・WikiWiki
  • サイバースペース独立宣言
    「政府よ、サイバースペースに干渉するな。我々は自由だ」(J・P・バーロウ,1996, 録音
現実(現在)
  • 自由より導かれ管理される幸せ (『カラマーゾフの兄弟』の大審問官)
  • ハイパージャイアンツ (GAFAM) 支配
  • テクノクラシーの台頭

『自由からの逃走』(E.フロム,1941) :
人間は自由を求めながら、同時にその自由がもたらす孤独・不安・責任の重さに耐えられず、自由を放棄して権威や集団に逃げ込む → ナチスの台頭

『カラマーゾフの兄弟』第5編第5節大審問官

「ああ、われわれがいなかったら、人間どもは決して、決して食にありつくことはできないだろう! 彼らが自由でありつづけるかぎり、いかなる科学もパンを与えることはできないだろう。」


「だが、最後には、彼らがわれわれの足もとに自由をさしだして、《いっそ奴隷にしてください、でも食べものは与えてください》と言うことだろう。」
"in the end they will lay their freedom at our feet and say to us, 'Make us your slaves, but feed us.' "

「そして彼らは大喜びでわれわれの決定を信ずるのだ。なぜなら、その決定こそ、個人の自由な決定という現在の恐ろしい苦しみや、たいへんな苦労から、彼らを解放してくれるからだ。そして、すべての人間が幸福になることだろう。」


インターネット崩壊論

まずは皆が現実を直視することから

Internet IS for everyone

RFC3271

Internet IS for everyone
- but it won't be unless WE make it so.

2002, V.Cerf

Vint Cerf

イリイチに学ぼう

人々は物を手に入れる必要があるだけではない。暮らしを可能にしてくれる物を作り出す自由、それに自分の好みに従って形を与える自由、他人をかまったり世話をしたりするのにそれを用いる自由を必要とするのだ。

豊める国々の囚人はしばしば、彼らの家族よりも多くの品物やサービスが利用できるが、品物がどのように作られるかということに発言権を持たないし、その品物をどうするかということも決められない。彼らの刑罰は、私のいわゆるコンヴィヴィアリティを剥奪されていることに存する。彼らは単なる消費者の地位に降格されているのだ。
〜『コンヴィヴィアリティのための道具』より

Tools for Conviviality

先人からのアドバイス

ダイアナ・シューマッハ

全面的崩壊を回避できるよう、われわれを教育して根本的に変えさせるのは、ただ一つ、生活のあらゆる分野での徹底した悔い改めであって、「果てしなく広がる戦場で崩壊を押さえ込もうと戦うこと」ではない。
(『スモール イズ ビューティフル 再論』序文)

イヴァン・イリイチ

災厄の避けがたい暴威を、自立共生的な再構築へと革命的に転回させるいとなみに、大多数の人々を協同させることができるものは、弱きものとしての言葉あるのみなのだ。

新しいサイバースペース独立宣言

サイバースペース独立宣言 (1996年) のオマージュ

インターネットを牛耳る巨大企業どもよ、お前たち情報と技術でできたか弱い巨人どもよ、私は新しい精神のすみか、新しいサイバースペースの住人だ。未来のために私はお前たち過去の人間に要求する。我々のことは放っておいてくれ、と。お前たちは我々にとって歓迎すべからざる客だ。我々の集まるところでお前たちの権威は通用しない。
我々は課金によって選ばれた企業など持たないし、持つ気もない。したがって、私がお前たちに向かって語りかける言葉には、自由が常に語ってやまぬ言葉以上のいかなる権威も含まれていない。そこで私は宣言する。我々が作りつつあるグローバルな社会空間は当然ながらお前たちが押しつけようと画策する資本主義体制からは独立している、と。....
https://goldhead.hatenablog.com/entry/2023/12/21/160629 より

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